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『仁徳陵 40メートル長かった 宮内庁 周濠部分を測量し判明』 毎日新聞4月13日付朝刊はこう報じている。国内最大の古墳で、宮内庁が仁徳天皇陵として管理する大山古墳(堺市)の墳丘の全長が、5世紀の築造当初、少なくとも現在より約40㍍長い525㍍はあったことが、同庁への取材で明らかになったという。宮内庁書陵部が水に覆われた周濠部分の地形を初めて測量し判明した。486㍍としている現在の全長は、大正時代の測量に基づく。約1600年の月日で堆積したヘドロの下には、さらに墳丘が広がっている可能性もあるという。また、3重になっている周濠のうち、いちばん内側だけでも、標準的な25㍍プール700杯分に当たる約34万立法㍍の水があることも分かった。調査は2016年12月に実施した。宮内庁は、将来的に周濠の水を全部抜き、浸食が続く墳丘の護岸工事をする方向で検討しており、排水計画を立てるため、ボートに乗せた機器から音波やレーザーを発する方法で水面下の地形を調べ、水量も計測したという。水に覆われた部分にも、墳丘の裾部分が広がることを確認したという。宮内庁が、自らが管理する墳丘の調査を進めることは望ましいことと思われる。宮内庁が天皇陵としている墳墓の調査は一般に認められていないが、古代史の科学的な解明のため、宮内庁自らが調査をすすめるとともに、研究者による学術調査を認めてほしいものである。それにより、古代史解明に大いに寄与することができるのではないか。
『南鳥島海底にレアアース 世界需要の数百年分 東大などのグループ発表』 毎日新聞4月11日付朝刊はこう報じている。携帯電話などに欠かせないレアアース(希土類)が、小笠原諸島・南鳥島(東京都)周辺の排他的経済水域(EEZ)の海底に世界需要の数百年分あることが分かったという。東京大や海洋開発研究機構などの研究グループが11日付の英科学誌サイエンティフィック・リポーツに発表したという。レアアースは現在、生産量の9割を中国が占めている。グループは2013年、南鳥島沖の海底に高濃度のレアアースを含む泥(レアアース泥)があることを発見。調査船で15年までに南鳥島沖南250㌔の海底(深さ約5600㍍)25カ所から試料を採取し、約2400平方㌔の資源量を推定した。その結果、約1600万㌧あると推定され、モーターなどに使うテルビウムは世界需要の420年分、液晶ディスプレイの発光体に使うユウロピウムは620年分あるという。採掘技術の開発も行い、レアアース泥の粒の直径が通常の4倍以上あることに着目。特殊な装置でふるいにかけレアアースを抽出する方法を発明し、地上の実験で、ふるいにかけず泥をすくうより2.6倍の濃度でレアアースを採取することができたという。調査に参加した加藤泰浩・東京大教授(地球資源学)は「十分な資源量が海底にあることが分かった。効率的に採取できる可能性も高まり、資源開発の実現に一歩近づいた」と話しているという。貴重な資源が特定の一国の生産量に縛られると政治的原因からも輸入量が不安定になる。従って、新たに国内で資源を探していくことの意義は大きい。すなわち、我が国は海底に資源を求めるのが一つの行き方だろう。
『エネ戦略 後手後手 主力なく「総花に」経産省提言』 毎日新聞4月11日付朝刊はこう報じている。経済産業省の有識者会議「エネルギー情勢懇談会」が10日まとめたエネルギー長期戦略の提言は、当面のエネルギーの「主役」が見通せない中で、すべての選択肢を追求する総花的な内容となったという。世界的に普及が進む再生可能エネルギーへ注力する姿勢は打ち出したが、他国に比べ出遅れは鮮明で、日本の戦略が後手に回っている。これまでのエネルギー政策を追認してきた現有識者会議メンバーでは致し方ないだろう。世界の趨勢、将来の方向は感じていながら、従来の方向から抜け切れないでいる。典型的な時代遅れの様相である。将来的には、再生可能エネルギーで進まざるを得ず、かつリスク分散を考えれば各再生可能エネルギーがそれぞれ10~20%程度をシェアすること以外には解決方向がないと思われるが。この方向に方向転換するには、旧来の考えの人々には退場してもらうほかはない。将来を正しく見据えた、若手官僚の台頭を期待したい。
『石炭火力 邦銀多額融資 国際団体公表 1~4位は中国勢』 毎日新聞4月10日付夕刊はこう報じている。地球温暖化を悪化させるとの批判が特に強い石炭火力発電事業に、中国の銀行や日本のメガバンクが多額の融資をしているとの報告書を国際環境団体のチームが9日、公表したという。世界の主要36行のうち融資額1~4位を中国の銀行が占め、三菱UFJフィナンシャル・グループが5位、みずほフィナンシャルグループが9位だったという。温暖化の深刻な被害の回避を目指す「パリ協定」が2020年に始まるのを踏まえ、世界では脱石炭の流れが強まっている。東京都内で記者会見した環境団体レインフォレスト・アクション・ネットワークのハナ・ハイネケンさんは「パリ協定」の目標が達成できるよう、化石燃料への融資を中止すべきだ」と話したという。報告書は、36行が15~17年、パリ協定の目標達成を脅かす化石燃料事業にどの程度融資したかを分析。石炭火力への融資は計939億ドル(約10兆円)に上がり、最多は中国工商銀行だったという。三菱UFJは45億ドル、みずほは33億ドル、三井住友フィナンシャルグループが9億ドルで22位という。日本と中国の銀行が融資額全体の半分以上を占めている。石炭火力は天然ガス火力の2倍以上の二酸化炭素(CO2)を出すとされる。価格が安く、国内では東京電力福島第1原発事故以降に増加。国際協力銀行(JBIC)やメガバンクは、東南アジアなどへの輸出も支援しているようだ。全く困った銀行の暗躍である。外国のためにならない融資はやめるべきであろう。今日(4月10日)夕方のNHKTVはニュースで、メガバンクの収益が落ち(それに加えて、新営業システムの導入もあるようだが)来年度採用人員を大幅に削減するとの報道を行っていたが、メガバンクの石炭火力への融資は、「貧すれば貪する」あるいは「背に腹は代えられない」をまさに地で行くことになる。世界の及び将来の人類から非難を浴びるようなことは避けるべきである。むしろ再生可能エネルギーに融資すべきと思われる。
『90億光年先 星観測 東大、東北大チーム 「最も遠い」記録更新』 毎日新聞4月6日付朝刊はこう報じている。 単独で見分けられる星としては最も遠い、90億光年離れた恒星の観測に成功したと、東京大や東北大などのチームが英科学誌ネイチャー・アストロノミーで発表したという。無数の星が集まった銀河はもっと遠い場所で見つかるが、単独の星ではこれまで約1億光年先が最も遠く、記録を大きく上回った。宇宙空間に重い物質や天体があると、その大きな重力によって光が曲がる「重力レンズ」という現象が起きる。かすかな光しか届かない遠い星でも、この現象で光が集まって地球で観測できるという。チームはハッブル宇宙望遠鏡で観測中に、遠い銀河の中で光る点のような天体を発見。1個の星から出た光が重力レンズの効果で2000倍以上強められたものとわかったという(その詳細なプロセスは原論文を見る必要がある)。過去の観測では見えなかったが、重力レンズの効果が強くなる領域へ動いたため捉えることができたという。チームは、ギリシア神話に登場する人物から「イカロス」と名付けたという。宇宙はまだまだ未知のもので満たされているようだ。恒星が単一の構成であれば、その恒星の性質が解明しやすいのであろうか。
『温暖化適応「情報不足」 対策担う自治体の7割 本紙調査』 毎日新聞4月5日付朝刊はこう報じている。 地球温暖化に伴う被害を軽減する対策(適応策)の推進に対し、地域での対策を担う都道府県と政令市の約7割が「影響予測や対策に関する科学的な情報が不足している」と毎日新聞の全国調査に回答したという。適応に関する計画は、9割超が策定済みか策定を予定しているが、情報不足が実行を滞らせる可能性があるという。環境省等は国内での温暖化の影響予測をまとめた報告書「日本の気候変動とその影響」を最近公表しているが、報告書の公表・送付だけでなく、実際に地方に足を運び、丁寧に説明することが必要であろう。分厚い報告書を公表し、送付するだけでは全く不十分である。親身になった対応が必要である。今後の環境省の動きを期待したい。本省でなくても、全国の主要都市にある地方環境事務所が地域ごとに説明会などを行うことが求められるだろう。それこそが真に国民に役立つ情報発信となろう。
『CO2削減 経産省が勧告 神鋼の新設石炭火力巡り』 毎日新聞4月5日付朝刊はこう報じている。経済産業省は4日、神戸市に石炭火力発電所の新設を計画する神戸製鋼所に対し、二酸化炭素(CO2)のさらなる削減策を講じるよう求める勧告をしたという。稼働後に電力供給を受ける関西電力などと連携し、対策を取るよう要請した。妥当な勧告と言えよう。この問題は、もともと環境大臣も強く要望していたものであり、発電推進側の経産省がこのような判断を下したことは当然とは言え、価値ある。経産省もこれまでの政策に拘らず、国際的動向、将来の地球環境に配慮し、今後とも是是非非で判断されることを期待したい。
インターネット情報(4月5日06:50、共同通信)によると、霧島連山の新燃岳が噴煙高さ5000m(最近の一連の噴火では最も高いと思われる)の爆発的噴火をしたようだ。宮崎、鹿児島県境にある霧島連山・新燃岳(1421㍍)で5日未明、爆発的噴火が起き、噴煙が今年3月以降の噴火活動ではもっと高い、火口から約5000㍍まで上がったという(噴火前に山体膨張は観測されていたのだろうか? 気になるところである)。気象庁は噴火警戒レベル3(入山規制)を維持し、火口から2㌔圏で火砕流に、3㌔圏で大きな噴石に警戒するよう呼びかけている。気象庁によると、5日午前3時31分に起きた爆発的噴火で、大きな噴石が火口から約1.1㌔まで飛んだという。その後にも噴火が観測された。爆発的噴火は3月25日以来。風下側を中心に火山灰や小さな噴石にも注意が必要としている。3月25日以降、新燃岳火口からの噴煙もほとんどなく、活動は沈静化していたように見えたが、これは活動の終了を示すものではなく、一時的な停止(地下からはマグマの供給が続いていた?)であったようだ。今後も爆発的な噴火が予想されるので、注意深い観測が必要だろう。なお、新燃岳北西約5kmにある硫黄山の噴気活動が3月25日以降、やや衰えてはいたが、依然活発であったことは重要ではないか。硫黄山の噴気活動もしっかりモニタリングする必要があるだろう。 ⇒⇒⇒なお、4月6日早朝のNHKTVでは4月5日未明の爆発的噴火の噴煙最高高度はさらに高く8000㍍であったようだ。今後の火山活動の注意深い観測が必要と思われる。
『「温暖化対策せず」5.4℃上昇 気候変動の予測 国が報告書』 毎日新聞4月4日付朝刊の「くらしナビ&環境」欄はこう報じている。 地球温暖化抑制の有効な対策を取らなかった場合、今世紀末の平均気温は現在と比べ最大で5.4℃上昇するなど、国内での温暖化の影響予測をまとめた報告書「日本の気候変動とその影響」を環境省などが公表したという。温暖化影響への対応「適応」を強化する「気候変動適応法案」が今国会で成立する見通しで、報告書は被害軽減策の計画策定や実行に役立てる狙いがある。 報告書は、同省などが最新の研究成果などを基に2009年から公表している。今回は13年以来5年ぶりの改定で、農業や水害、土砂災害など、人命や経済への深刻な影響が大幅に拡充されたという。報告書によると、日本全体の平均気温は今世紀末に3.4~5.4℃上昇すると予測。地域別では、東京都を含む東日本の太平洋側で3.2~5.3℃上昇など、緯度の高い地域ほど上昇幅が大きい。年間の真夏日数も全国的に増加する。東日本の太平洋側では約57日増え、地域によっては100日以上になる可能性もあるという。北日本の太平洋側の北海道釧路市の場合、これまでは最高気温が30℃を超えるのは10年に1度程度だったが、予測では30日以上になり、生活スタイルや産業などへの影響は必至だと見られている。 ゲリラ豪雨のように短時間に強い雨が降る回数も増加する。1時間当たり50㍉以上の「滝のように降る雨」は1970年代以降増加傾向にあり、今世紀末には、現在よりもさらに増えると予測されている。豪雨の発生頻度も増える傾向にあり、06~15年の土砂災害の年平均件数が1046件だったのに対し、16年は1492件に上がった。17年7月の九州北部豪雨では、福岡県朝倉市で24時間の解析雨量が約1000㍉に達し、甚大な被害が出た。今世紀末には最悪の場合、大雨の際の雨量が約25%増加する可能性がある予測され、土砂災害の規模拡大や頻度が増えることが懸念されるという。農業分野では、気温上昇傾向に伴って、品質低下など悪影響が出始めているため、いち早く適応策が取られている。コメは穂が出てから約20日間の気温が高いと、低い品質のコメ粒が増える。既に全国で高温による品質低下や収量の減少が確認され、各地で高温に強い品種や栽培技術の開発・普及が進んでいる。「きぬむすめ」や「つや姫」など高温耐性品種の作付面積は、記録的な猛暑だった10年と比べ、16年時点で2.4倍に上がっているという。報告書の構成や査読を担当した専門委員会の肱岡靖明委員長は「新たな予測なども増え、影響に関する情報が充実した。今後適応策を進めるために、ウェブサイト『気候変動適応情報プラットホーム(A-PLAT)』で報告書の内容を分かりやすく伝えるなど、一般の人にも地球温暖化に関する最新の知見を広める取組みを進めたい」と話しているという。温暖化の影響はますます大きくなっているが、CO2削減対策はいっこうに進まない。現状では、予測の悪い方へ進みかねない。
『3月 平年より2~3℃高く サクラ 全国で急速満開』 毎日新聞4月3日付朝刊はこう報じている。今年の桜前線は急速に上昇し、各地のサクラが記録的な速さで満開になっているという。全国32の観測地点で平年より1週間以上早く満開になり、うち14点では観測史上最も早く満開になった。気象庁によると、3月は南から暖かい空気が流れ込みやすい気圧配置だったため、全国的に気温が上昇して開花が早まったという。同庁によると、寒気にさらされることで花の目が目覚めて開花の準備が始まる「休眠打破」が順調だったことと、3月の平均気温が各地で平年を2~3℃上回ったことなどで開花が早まったという。高知市や富山市などで11日、東京では10日早く満開になったほか、大阪市や名古屋市など14地点で観測史上最も早い記録となったという。民間の気象会社「ウェザーマップ」によると、4月中旬ごろまでに新潟や山形、秋田など北陸・東北地方で順次開花し、その後、桜前線は北海道へ進む見通しという。なお、当研究所(埼玉県狭山市)では2012年5月8日から、敷地内で1m深地温の連続観測を続けているが、近年の2~3月の月平均1m深地温は以下のようになっている。2016年:9.89℃(2月)、11.36℃(3月)、2017年:9.87℃(2月)、11.13℃(3月)、2018年:8.25℃(2月)、10.90℃(3月)となっている。 地温は2018年の冬は特に低くなっており、2018年の2月から3月にかけての地温上昇は2.65℃となっており、2017年および2016年より、かなり大きくなっている(1.26℃(2017年)、1.47℃(2016年))ことも桜の開花状態を良く裏付けている。
『粗悪学術誌ネットで急増 査読ずさん 掲載料狙いか』 毎日新聞4月3日付朝刊はこう報じている。インターネット専用の学術誌の中で、別の研究者による内容のチェック(査読)が不十分な論文を載せる質の低い学術誌が急増しているという。研究者から徴収する掲載料を目的として運営している業者もあると見られ、学術的に妥当と言えない成果に「お墨付き」が与えられることで誤解が広がる恐れもある。日本の科学者の代表機関「日本学術会議」は対応策を検討するという。多くのまともな研究者は論文の質を大事にしていると思われるので、問題が少ないと思われる。しかし、論文の数が必要な場合、そのような雑誌に投稿することがないとは言えないと思われる。大事なことは、新規ポストへの応募や昇進等で一定の論文数が必要な場合、それを審査する立場の人がきちんと論文の質を評価できるかという問題であろう。一般に時間が足りない審査者クラスの人に的確な判断ができるかどうかであろう。
『「50年に再生エネ主力」原発も温存 経産省有識者会議素案』 毎日新聞3月30日付朝刊はこう報じている。2050年に向けた国の長期的なエネルギー戦略を議論している経済産業省の有識者会議の提言の素案が29日、判明したという。太陽光や風力発電などの再生可能エネルギーを「主力電源」と位置付ける一方、原発は温室効果ガス削減のための「選択肢」とし、依存度を下げつつ温存する方針を示したという。有識者会議は「エネルギー情勢懇談会」。地球温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」で、日本は50年に温室効果ガスを8割削減する目標を掲げている。懇談会はこの目標達成に向けた長期戦略を議論しており、4月上旬にも提言をまとめるという。経産省は30年までの国のエネルギー戦略を定める「エネルギー基本計画」の見直し作業を進めている。提言を基に、新たな基本計画に50年までの長期戦略を初めて盛り込むという。素案では、再生可能エネルギーが価格低下によって「主力化への可能性が拡大している」と指摘。ただ、天候などにより発電量の変動が激しい点などが課題として、蓄電池などの技術開発に向けた投資を促進するという。従来の基本計画で「重要なベースロード(基幹)電源」と位置付ける原発については、「脱炭素化の選択肢」として、人材や技術維持に取り組む必要性を明記している。火力発電については、非効率な石炭火力などを順次廃止する考えも示している。電源構成などの数値目標は示さなかったという。再生可能エネルギー発電の主力化、石炭火力の順次廃止化は評価できるが、依然として、原発を温存する姿勢で、全体として折衷的で新味はなく、将来における方向が明確でない。伝統的な考え方の多い有識者会議では、これ以上は無理だろう。経産省も若手官僚の抜擢を図り、有識者会議委員も大幅に変える以外は、世界の動向を先導し、将来世代に夢と責任を持てる画期的な政策は残念ながら出てこないだろう。
『衝撃的だった「ブラックホール蒸発」 ホーキング博士 宇宙論に影響大きく』 毎日新聞3月29日付朝刊の「科学の森」欄はこう報じている。 難病の筋萎縮性側索硬化症(ALS)に見舞われながら、ブラックホールや宇宙創成について独創的な理論を次々と打ち出した英国のスティーブン・ホーキング博士が76歳で亡くなった。現代宇宙論に大きな影響を与えたホーキング博士の業績を振り返る。博士の代表的な業績は「ブラックホール蒸発理論」(1974年)だ。強大な重力のため、この世で最速の光さえ逃げ出せないはずのブラックホールからエネルギーが放射(ホーキング放射)され、ブラックホールは徐々に質量を失ってやがては消滅するという理論だ。「最初は『えっ?』と思ったが、よく考えれば納得できた。『コロンブスの卵』のよう理論でショックを受けた」と、ほぼ同世代の佐藤勝彦・東京大名誉教授(72)=宇宙物理学=は当時を振り返る。ミクロの世界を扱う量子力学では、真空とは何もない状態ではなく、それと反対の電気を帯びた反粒子のペアが生まれては消える。ブッラクホールの境界付近で生まれた粒子と反粒子のペアのうち、片方がブラックホールにのみ込まれ、もう片方が外に逃れると、逃れた方はブラックホールから飛び出したように見える。これがホーキング放射だ。ホーキング放射はわずかで、宇宙にあるブラックホールが蒸発してしまうには、宇宙の年齢(138億歳)でも足りない。まだ、実証されていないが、多くの物理学者は正しいだろうと考えている(⇒蒸発が進み、かなり小さくなったブラックホールが将来観測から発見される可能性はあるか?興味ある。アインシュタインの理論からいくつかの予想がなされたが、その当時は実証できなかったが、その後実証されたものがある)。博士の名を世に知らしめた最初の業績は、20代で数理物理学者のロジャー・ペンローズ博士と共に証明した「特異点定理」だ。強い重力の下での現象を説明するアインシュタインの一般相対性理論が正しいとすると、宇宙の始まりやブラックホール内部には密度が無限大で時空が限りなくゆがんだ「特異点」が存在することを数学的に証明した。だが、現実の時空には無限大が現れる領域は存在しない。このことは、全ての時空を記述する理論と考えられていた一般相対性理論が特異点では破綻することを意味し、学界に衝撃を与えた。30年以上の親交がある前田恵一・早稲田大学教授(相対性理論)は博士の研究人生を「重力理論と量子論を統一するという、現代物理学の最も重要な研究に一貫して取り組んだ」と振り返る。近年は、ブラックホール蒸発に伴い、ブラックホールになる前に持っていた天体の情報も消えてしまうという未解決問題に注力。英国で昨秋開かれた研究会で前田さんは、博士が研究仲間とこの問題を熱心に議論する様子を目にしたという。博士に改めて哀悼の意を捧げたい。「偉大な知能に安らかな眠りを」
『温暖化対策で港湾コスト増? 調査会社が試算 海面上昇など最大2兆5000億円』 毎日新聞3月28日付夕刊はこう報じている。地球温暖化で海面上昇や高潮の傾向が強まると、国内11の主要港湾で土地のかさ上げ工事などが必要になり、合計で最大計2兆5000億円の対策費が必要になるとの試算をシンガポールの調査会社が発表したという。特に千葉港の対策費は6600億円とアジア地域で最大で、今後、港湾整備計画を作る際には温暖化対策も考慮すべきだと指摘している。国連の「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)によると、世界の気温が産業革命前より平均約4℃上がる場合、海面水位は最大80㌢上昇し、高潮の原因となる暴風の強さは20~30%増すとしている。試算はこれを基に、アジアの主要53港湾について、浸水被害を防ぐための土地のかさ上げや防潮壁建設にかかる費用を分析。その結果、国内では千葉港で最大6600億円、北九州港で同5300億円、横浜川崎港で同4150億円――が必要になると試算している。「コンテナーヤードや倉庫の高台移設などがコストを押し上げる要因になった」としている。調査したアジア・リサーチ・エンゲージメント社の担当者は「港湾は温暖化被害の最前線。早期の対策が将来のコスト増加を回避する鍵になる」と指摘している。今後、地球温暖化対策として、CO2排出削減だけでなく、温暖化に適応する種々の方策が提案されると思われるが、このような温暖化適応コストをできるだけ正確に評価し、温暖化対策の必要性を広く訴えていく必要があろう。
『2030年度 原発20%維持 電源構成 エネルギー計画素案』 毎日新聞3月27日付朝刊はこう報じている。 経済産業省は26日、国のエネルギー政策の基本方針を定める「エネルギー基本計画」の見直しに向けて議論を行う有識者会議を開き、2030年度の目標について原発20~22%など現状を維持する案をおおむね了承したという(有識者は3.11後の記憶をすでにお忘れのようだ。ほとんどの国民もあきれているだろう)。再生エネについて「主力電源」と明記したことは評価できるが、未だに世界の認識と大きくずれ、後世の国民につけを残す政策をいつまで続けるのだろう。地熱発電推進を目指す地熱関係者にとって、まずは、2030年度の国の目標をできるだけ実現し、さらに、2050年~2100年を目指す方向を明確にしていくことだろう。
『伊方2号機廃炉へ 四国電 運転延長、採算とれず』 毎日新聞3月27日付朝刊はこう報じている。 四国電力が伊方原発2号機(愛媛県伊方町、56.6万kW)を廃炉にする方針を固めたことが関係者への取材で分かったという。27日の取締役会で決定し、佐伯勇人社長が愛媛県庁を訪ねて中村時広知事に伝えるという。2号機は運転停止中で2022年には40年の運転期限を迎える。四国電力は1000億円以上の安全対策費をしても(⇒すると)採算が取れないと判断したという。これが原発の置かれた実情だろう。廃炉は東京電力福島第一原発を除いて9基目。老朽原発を巡っては、関西電力が昨年12月、大飯原発1,2号機(福井県おおい町、ともに117万。5万kW)の廃炉を決めている。経済性がなく、活断層(伊方の場合は中央構造線)に近く、一度事故を起こすと長期間の停止が生じる安定供給を満たさない原発はやがて歴史から消え去るだろう。歴史的役割が終了したということか。
『小惑星回避「核検討も」地球接近時 NASA試算 宇宙船なら50回ぶつける必要』 毎日新聞3月28日付朝刊はこう報じている。 地球に衝突しそうな直径500㍍の小惑星をはじいて安全な軌道へ移動させるには、重たい宇宙船を10年間に約50回ぶつける必要があるとの研究結果を、米航空宇宙局(NASA)などのチームがまとめたという。もっと大きな小惑星が飛来したり、地球への衝突直前に見つかったりすると、重いものをぶつけるだけでは対処できない可能性もあり、チームは「核爆弾を検討する必要がある」としている。小惑星衝突というSF映画のような事態(⇒地質時代には現実に生じており、生物の大量死などが知られている)に備え、NASAは2016年に惑星防衛調整室を設置して対策の検討をし始めているが、具体的方法を示すのは初めてという。小惑星を押して軌道を変えるには時間がかかるため、衝突までの期間が短いほど宇宙船を数多く飛ばす必要が生じるという。また、早めの対応が重要という。2135年に地球に衝突する可能性がわずかながら懸念されている小惑星「ベンヌ」にNASAが開発する全長9㍍、重さ8.8㌧の宇宙船「ハンマー」をぶつけて、衝撃で地球すれすれを通過する軌道に変更することを想定している。直径500㍍、重さ8000万㌧のこの天体が地球に衝突するコースをたどった場合、回避するために宇宙船を10年間に約50回前後ぶつける必要があることが判明したという。25年かけて軌道を変える場合は10回程度に減るという。ただ、直前になって初めて衝突しそうがことが分かった場合、チームは「対応が難しくなる」と警告、核爆弾を打ち込み、衝撃で軌道変更させる手法も検討しているという。NASAは16年に打ち上げた無人探査機「オシリス・レックス」を今年後半にベンヌに送り込み、岩石の組成など詳しく調査するという。まことに物騒な話だが、事前の対応検討は必要だろう。ただ、より重要なことは、小惑星の軌道を詳細に計測し、最終的な軌道をより正確に予想することであろう。
『新燃岳で火砕流』 毎日新聞3月26日付朝刊はこう報じている。 噴火活動が続く宮崎県と鹿児島県境の霧島連山・新燃岳(1421㍍)で25日朝、ごく小規模の火砕流が発生したという。昨年10月以降の一連の噴火で火砕流が確認されたのは初めてという。気象庁は噴火警戒レベル3(入山規制)を維持し、火口からおおむね2㌔の範囲で火砕流に、3㌔の範囲では大きな噴石に注意するよう呼びかけている。今回の小規模火砕流の噴出が、一連の活動の終了期の調整的活動を示すのかあるいは今後の噴火活動の継続を示すのか予断を許さないが、注意深い観測が必要であることは確かだ。
『CO2排出量一転増加 昨年世界で325億㌧』 毎日新聞3月25日付朝刊はこう報じている。 国際エネルギー機関(IEA)は、2017年の世界の二酸化炭素(CO2)排出量は16年比1.4%増の325億㌧で、14~16年の横ばいから増加に転じたと発表したという。世界経済が好調で、化石燃料の消費が拡大したため。エネルギー効率の改善が滞っており、「地球温暖化に対抗するパリ協定の目指す水準には、現状の取組みでは不十分だ」と指摘している。発表によると、17年のエネルギー需要は16年比2.1%増。需要の伸びの6割は比較的価格が安かった化石燃料が占めた。CO2を多く排出する石炭火力発電所が主にアジアで増加したため(主に中国・インドが想定される)、エネルギー消費量によるCO2排出量は、14~16年の321億㌧から4億㌧余り増えて過去最大だった。米国や英国、メキシコ、日本では減少した(⇒日本では、環境省の抵抗も一部効果を上げたか?)。特に米国では再生可能エネルギー法が広がり、16年比2500万㌧と世界で最も減らしている。米国の減少は3年連続(⇒トランプ米大統領はパリ協定に背を向けているが、州・各自治体及び先進的企業による努力の結果と思われる)。英国の排出量は16年比3.8%減で、過去約60年間で最も低いレベルだったという(⇒EU離脱問題で、政治的には大きく揺れ動いているが、地球暖化対策は抜かりなく進めているようだ)。
『乾通りで満開の桜 2年ぶり公開』 毎日新聞3月24日付夕刊はこう報じている。 気象庁は24日、東京都心で桜(ソメイヨシノ)が満開になったと発表したという。同日午前、同庁職員が靖国神社(千代田区)の標本木で8割以上のつぼみが開いているのを確認した。一方、桜が見ごろになった皇居・乾通りの一般公開がこの日、始まった。都心の桜の満開は平年に比べ10日、昨年より9日早く、1953年の統計開始以降、2013年の3月22日次ぐ3番目の早さとなった(ただし、今年の冬は例年に比べ寒かったが、その後、急速に温まったことによるらしい。なお、本研究所(埼玉県狭山市)では2012年5月8日以来、所内の敷地で1m深地温の連続観測を行っているが、冬季の地温は例年になく低かったが、その後、春に向かい急速に上昇している)。皇居・乾通りは、43本あるソメイヨシノを中心にヒガンザクラなど、さまざまな種類の桜が植えられた並木道。昨年は樹木の植え替え中で中止だったため、春の公開は2年ぶりとなるという。開門前から多くの人が並び、宮内庁は予定より20分早い午前9時40分に開門したという。訪れた人たちは石垣やお堀など皇居ならではの景色も眺めつつ、ゆっくりと歩いていたという。4月1日までの午前10時~午後3時半、坂下門からのみ入門可能。桜の開花から、満開までの約1週間は桜を愛でる、国内最大の年中行事化している。外国人の日本の桜愛好者も多く、テレビのインタビューでは多くの外国人が楽しみ、感銘を受けているようだ。毎年、開花及び満開の時期は、各種の報道も加熱気味であるが、多くの人がこの季節を楽しむのは、日本の良き伝統とも言えよう。開花の時期、満開期などを地温測定結果から小気候的に考察を深めたいものである。
『弥生土器に建物5棟 同じ構造くっきりと 豊作祈る祭儀場か』 毎日新聞3月24日付朝刊はこう報じている。 大阪府茨木市教委は23日、切り妻屋根の高床建物5棟が描かれた弥生時代中期後半(約2000年前)の土器が、中河原遺跡から出土したと発表した。5棟以上の建物が描かれた弥生土器は全国3例目だが、切り妻屋根の建物ばかりの土器は初めて。絵は豊作を祈る祭祀の場を表しているとみられ、市教委は「当時の人々の精神世界を知る上で貴重な発見」としている。市教委が2016年から発掘し、9点の土器を見つけた。接合後の大きさは縦21.5㌢、横25.5㌢。確認された大小5棟の建物はいずれも同じ構造で、V字形の棟飾りを持つ屋根の下に3本の長い柱が書かれていた。中央に配置された建物だけが小さく、左右に張り出した棟を支える柱や、はしごがかけられた建物もあった。5棟以上の建物が描かれた土器は、奈良県橿原市の中曽司遺跡などの例があるが、今回は5棟のほぼ全容がわかるほど明瞭に描かれていたのが特徴。辰巳和弘・元同志社大学教授(古代学)は「棟のそり上がりなどに誇張した表現が見られ、弥生時代の祭儀場を観念的に描いたと考えられる。この土器に稲を入れ、中央に描かれた小さい建物に納めて豊作を祈ったのではないか」と話している。土器は28日から6月25日まで、茨木市立文化財資料館で展示される。近畿地方では、弥生時代に、鉄器などの先進的遺物が、九州と比べて圧倒的に少ないが、弥生時代の生活・文化レベルが、北九州地域と比べてどうであったかを比較する資料になれば、それなりの意義があろう。
『送配電設備 統一へ 経産省、電力会社に要請』 毎日新聞3月23日付朝刊はこう報じている。経済産業省は、東京電力ホールディングス(HD)など電力大手10社に送配電設備の仕様を原則統一することを求めている。太陽光や風力など再生可能エネルギーの大量導入に向けて送配電設備の増強が必要となり、統一することでコストを下げる狙いがあるという。電力10社も応じる方針という。送電線や変圧器、電柱といった送配電設備は、素材などで各社の仕様がまちまちとなっている。経産省は各社に仕様の統一を求めたうえで、電力会社が異なる仕様を導入する場合は説明を求める方針という。仕様が統一されれば、設備の大量生産が可能になり、コスト削減が可能になり、コスト削減が期待できるという。また、このように仕様が統一されれば、いわゆる空き容量問題で垣間見えた、個々の電力会社による恣意的な取り扱いなども是正できるのではないか。
『関東甲信越 桜に舞う雪』 毎日新聞3月22日付朝刊はこう報じている。低気圧が発達しながら本州の南岸を移動した影響で21日、関東甲信の山沿いを中心に雪が降った。桜の開花が始まった東京都心などでも雪となった。22日にかけては、上空に寒気も流れ込むことから、東北の太平洋側も含めて雪が降る見込みで、気象庁が大雪や路面の凍結などに注意を呼び掛けている。気象庁によると、山梨県の河口湖では21日午後7時までの24時間に26㌢の雪が降ったほか、長野県の軽井沢町や上田市で11㌢、栃木県日光市でも10㌢の降雪を記録。低気圧は22日にかけて前線を伴ったまま、本州の南岸から東北の三陸沖に進むと見られている。22日午後6時までの24時間予想降雪量は、いずれも多い所で、甲信で30㌢、関東北部の山沿いで25㌢など。東北は太平洋側の山沿いで40㌢、平地で20㌢。日本海側の山沿いで30㌢、平地が15㌢。東北で予想される最大風速(最大瞬間風速)は太平洋側で15㍍(30㍍)、日本海側で13㍍(25㍍)。地上気象は、20℃を超える日がある一方、積雪があったり、不順であるが、当研究所(埼玉県狭山市)敷地内で行っている1m深地温の連続観測結果からは、本年1月31日に今季の最低地温7.64℃を記録後、着実に上昇を続け、本日3月22日には11.40℃に上昇している(上昇割合は0.0752℃/日)。確実に春に向かっている。
『「脱炭素社会」を2040年ごろまでに 環境省が「考え方」』 毎日新聞3月21日付朝刊「くらしナビ・環境」欄はこう報じている。  環境省は、地球温暖化の原因とされる温室効果ガス排出の「長期大幅削減に向けた基本的考え方」を公表したという。2020年以降の国際枠組み「パリ協定」に基づく50年までの排出削減計画「長期戦略」の策定に向け、遅くとも40年ごろまでに脱炭素社会の実現を目指すという。また、炭素税や排出量取引などカーボンプライシング(炭素の価格付け)の導入や日本の脱炭素技術の海外輸出など、国内外で排出削減に貢献するよう促している。長期戦略を巡っては、16年に日本で開催した主要7カ国(G7)首脳会議で、パリ協定の実施期間が始まる20年までに策定することを申し合わせている。このうち、ドイツ、フランス、カナダ、米国は既に長期戦略を国連に提出済み。日本は16年に閣議決定した地球温暖化対策計画で「50年までに80%の排出削減を目指す」と定めたが、カーボンプライシングの導入を巡って政府内(⇒特に環境省と経済産業省か。そこで、首相の指導力が必要とされるが、残念ながら、首相の見解が見えない。むしろ消極的か?)で意見の隔たりがあるなど、具体的な議論は滞っている(⇒環境省の頑張りが必要。世界の動向・将来の方向を正しく判断すれば答えは自明である)。さて、「基本的考え」では、グローバル企業を中心に脱炭素化が急速に進む中、日本の技術を世界中に普及させることで、世界の脱炭素化をリードし、国際競争力の強化にもつながると強調しているという(⇒画餅の感強し。国内的にも方向が不一致で、また、国際的にも、日本の考えは理解されていないと思われる。むしろ、消極的と見られている)。また、地域ごとに再生可能エネルギーの普及を進め、住宅の脱炭素化や車の電動化と合わせ、循環型の地域社会作りにもつながると指摘している(⇒インパクトが弱い。環境省はその考えを強力に推し進めるべく、本腰を入れるべきである)。中川雅治環境相は長期戦略の策定に向け、「4月以降の早い時期に政府全体での協議の場を設ける」としている(⇒現状では、笛吹けど踊らずになりかねない)。一方、経済産業省は国のエネルギー政策の基本方針を定める「エネルギー基本計画」の改定作業中で、長期戦略の協議は同計画の改定後に本格化する見通しという。環境省も経産省も、世界の動向・将来の方向をしっかり見据え、過ちの無い選択をしてもらいたい。
『今どきの歴史 沓形遺跡(仙台市) 防災に役立つ考古学へ』 毎日新聞3月19日付朝刊はこう報じている。やや長いが、非常に興味深いので、紹介したい。 仙台市若林地区の沓形(くつかた)遺跡。第1次発掘調査の報告書は2010年3月に発行された(⇒東日本大震災発災の約1年前)。 弥生時代中期に(2000年前ごろ)、太平洋から約2㌔(現在は4㌔)内陸に位置していた水田が津波を受けて廃絶したと、そこには明記されている。収録された写真を見ると、白っぽい砂で広範囲に覆われている。これこそ海から運ばれた砂、津波堆積物である。報告から1年後、東日本大震災が起こった。こんな経緯を知れば、「過去に大津波があったことを、もっとしっかり伝えてほしかった」と、誰しも考えたくなる。事実、震災直後に開かれた考古学の緊急フォーラムでは、「何か自分にもできることはなかったのか」と、当地の研究者が悔恨を口にしている。 自然と人間の営みの交点に展開される考古学は、なぜ歴史からの警告を活かせなかったのか。そもそも可能だったのか。発掘調査に携わり、報告書の編著者でもある斎野裕彦・仙台市文化財課専門委員に聞いた。「大変なことだという感じはありました。それで、本当に津波なのか、とれるだけデータをとって調べた」。見つかった砂の層が津波によるものかどうかの判定は実は簡単ではない。由来は海か川か。海の砂だとして、津波と高潮の区別はつくのか。沓形遺跡では、付近の海岸の砂の基礎研究をもとに、砂層の分布の広がりなどから津波堆積物と判定できた。しかし、と斎野さんはいう。「もっと大きな問題として、当時、このあたりの人の頭にあったのは、来るとしたら宮城県沖地震だ、と」。 1978年にマグニチュード(M)7.4の地震に見舞われた宮城県では、2000年代になり、同様のM8、津波3mクラスの地震が差し迫った危機として警戒されていた。防災システムの整備も、全てその想定の下で進められていたという。だが、東日本大震災ははるかに規模が大きかった。 「考古学の成果が1カ所であっても、1年、2年で防災システムが変わるものではなく、同じような例が複数出てきて、説得力をもつということだったと思う」。歯がゆさも残るが、斎野さんの述懐は、宮城県沖地震に呪縛された当時の雰囲気を伝えるものと思う。 何も、考古学だけが警鐘を鳴らせなかったというわけではない。現実の防災システム構築に関してはより近い位置にいる地質学・地震学系の研究でも、現海岸から4㌔の内陸で津波の跡が確認されていた。それが活かされたとは言えない。政治も行政もメディアも、最新の研究に反応できなかった。震災前、仙台市議会で沓形遺跡が取り上げられているが、施策にはつながらなかった。報道向け発表に接したメディアからも、議論の発展はうかがわれない。 「同じ対象に対して、別々の研究がバラバラに仙台平野で行われていたんですね」と斎野さんが振り返る。研究者に向けた言葉ではあるが、行政やメディアも含め、情報を知り得たあらゆる機関・個人の教訓となろう。  もちろん、震災後は変わったはずだ。過去の自然災害について、地震学、火山学、地質学、文献史学、考古学、民俗学など自然・人文科学の個別の学問を超えた総合的研究の必要性が強調されるようになった。 斎野さんも研究状況を調べ始めた。定年退職・再任用をはさんで博士論文にまとめ、昨秋、『津波災害痕跡の考古学的研究』(同成社)として出版した。諸分野が連携する土台をつくるためだ。特に、人の活動を扱う考古学については、災害の具体的な姿を明らかにできる特徴を力説する。  しかし、今も連携は不十分だと感じている。研究実態の検証、さらには告発の書でもあるのだ。 「(諸科学の)複数のデータで精度を高め、描かれる歴史の姿を大事にしないと、本当の防災にはならないと思う」。  本書の気になる指摘を一つ。現在、東日本大震災をベースに防災対策が進んでいるが、2000年前の地震はそれより大きかった懸念があるという。 改めて、心して用心する必要があるということであろう。 このような書籍が発行されていることを、筆者(当研究所 江原)は残念ながら知らなかったが、毎日新聞に紹介されている記事の内容に対しては、全面的に賛同できる。筆者も同様なことを考えている。 それぞれの学問分野では、限られた人材、機材、時間のなかで、資産を特定の分野に振り分けざるを得ない。そして、個々の研究者はその専門分野の研究に専念せざるを得ない。ここに隘路がある。そこでは、個々の研究者に任せざるを得ないが、その分野だけでなく、広く周辺分野も統括できるリーダーが必要であると思われる。 身近なところから考えて見る。最近、草津白根山で突然噴火が発生し、多くのけが人が出ただけでなく、死者も出た。草津白根山は大学や気象庁によって観測は行われていたが、その噴火が予想されるターゲットは、今回の噴火地点(本白根山)ではなく、現在活動的な湯釜火口の方であった。火山学関係者のほとんどすべてが次の噴火は「湯釜火口」と見なし、本白根山を含めた草津白根火山全体を見ることをしていなかった。全く虚を突かれた状態であった。これは東日本大震災前、「宮城県沖地震」に専門家・市民もあげて注目していたのと状況が似ている。結果論として指摘できるが、事前には個々の研究者レベルでは、そこまで思い至らなかったということだろう。止むを得ない点もあるが、同様な事象が発生したことは確かで、大きな反省材料である。 もう一点指摘したい。筆者は火山噴火予知研究の経験もあるが、その後、長きにわたって、地熱発電に関する研究を行って来た(主に地下構造の解明と地下における熱と水の流れの解明)。その経験から言うと、地熱発電所を建設する過程では、多様なデータを取得する。そして、それらは、火山防災や地すべり防災にも大いに貢献できる。今後、地熱技術者にとって、もちろん地熱発電所を建設することが第一義であるが、保持している防災データ等を広く地域に活かして行くことを考えるべきではないか。そのような地道な努力は、地域住民に評価され、結果として、地熱発電所の建設が地域の人々に受け入れられ、地熱開発が進むことにも寄与するのではないか。 
『都心 桜咲く 平年より9日早い』 毎日新聞3月18日付朝刊はこう報じている。気象庁は17日、東京都心で桜(ソメイヨシノ)が開花したと発表したという。平年より9日早く、昨年より4日早い(⇒当研究所(埼玉県狭山市)では2012年5月8日より、所内敷地で1m深地温の連続観測を行っているが、今年の冬は例年になく低温であったが、一方、地温の上昇率は例年になく速く、このような地温変化(もともとは、気温変化に準じている)が桜の開花を早めることに関係するのだろうか。地温の時間的変化と小気候の変化の点からも興味深い。午後2時半ごろ、同庁職員が千代田区の靖国神社境内の標本木で、開花の基準となる5輪の花が咲いていることを確認したという。周囲にいた市民から歓声や拍手が起き、早速カメラやスマートフォンを向けていたという。同庁によると、日本列島はこの日、各地で晴天に恵まれたが、気温はあまり上がらず、都心の最高気温は12.1℃と3月上旬並みだった。満開までは1週間から10日程度かかる見込みという。本格的な桜の季節ももうすぐだ。
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