地熱情報研究所

地熱情報研究所の立ち上げにあたって
地熱から少し離れて
最近の日本の地震活動 最近の日本の火山活動

1 |  2 Next >> 
 2024年3月1日より再開
2015年6月13日 日本地熱学会誌 第37巻 第2号(2015) が発行された(発行は4月25日)。平成27年学術講演会が10月21日(水)~24日(土)に大分県別府市で開催されることが発表されるとともに、論文1編と短報2編が掲載されている。論文は、西島 潤・藤光康宏両氏による「福岡県水縄断層系周辺における精密重力探査-断層構造と温泉湧出の関係-」(41~49ページ)。短報は、Yuki FUJII, Hiroki SAITO, Yumi KIYOTA, Tetsuya YAHARA and Toru DAIBO各氏による「Drilling Make-Up Well(O-21) at Otake Geothermal Power Station -To Maintain Power Output and Reservoir Stability-」(53~57ページ)および Hossein NOWAMOOZ, Seid NIKOOSOKHAN and Cyrille CHAZALLON各氏による「Seasonal Thermal Energy Storage in Shallow Geothermal Systems:Thermal Equilibrium Stage」(59~63ページ)。
6月12日、REN21が毎年発行している「自然エネルギー世界白書」の2013年版(最新版)がリリースされたことが環境エネルギー政策研究所(ISEP)より発表されました。主に2012年の世界の自然エネルギーの最新情報が掲載されています。詳細は、以下のISEP Web site をご覧ください。http://www.isep.or.jp/library/5043
 
また、日本語概要(3ページ)も紹介されています。
それによると、世界的な自然エネルギーの利用は2011年に引き続き2012年も増加を続け、(最新データを確認できる)2011年時点で世界の最終エネルギー消費量のうち約19%を自然エネルギーが供給した。その半分弱は「伝統的バイオマス」で供給されているとされている。
 
なお先進国では、いずれも自然エネルギーへの投資が減少しているが、もっとも明るいニュースは日本であり、日本での自然エネルギー投資(研究開発を除く)は73%増加して160億ドルとなり、その主な要因は新たな固定価格買取制度(FIT)による小規模な太陽光発電の急成長てあったと指摘されている。
 
 
地熱発電もFITにより事業性が増したが、発電所設置までのリードタイムが長いため、小規模の温泉発電の導入が始まったばかりであるが、日本各地で調査井の掘削が始まるなど地熱発電所建設に向かった動きが出ている。
国際環境NGOグリーンピースは、2013年3月、レポート「ポスト原子力の3大課題-国際事例から考える電力会社再生8戦略-」を発表した。本レポートは、電力会社が脱原発と自然エネルギーへの転換を図ることは、実は電力会社にとっても合理的な戦略であることを、原発事故後の金融・政治状況や、海外電力会社の事例をとうして提言した報告書です。この報告書では、3大課題(電力市場の自由化、原発資産の評価減、自然エネルギー革命)の分析、欧州の電力会社の経験の評価、有用な事例紹介をとおして、日本の電力会社が今後取るべき戦略についての提言を行っています。著者はGyorgy Dalllos(ギョルギー・ダロス)氏(グリーンピース・インターナショナル エネルギー投資シニアアドバイザー)。詳細は以下まで。http://www.greenpeace.org/japan/ja/library/publication/
 
真山 仁著の教養新書『地熱が日本を救う』(角川oneテーマ21/角川学芸出版刊/定価820円(税込))が3月10日(日)発売されます。同社によれば以下のように紹介されています。
 
電力問題解決の糸口が見えず、混迷を極めている今こそ地熱発電の可能性に光を当てたい。小説『マグマ』にも込めた思いを自身の言葉に乗せて一石を投じる。エネルギー問題に戸惑うすべての日本人へ-。
 
小説「マグマ」でいち早く地熱発電の可能性を提示してきた作家・真山 仁氏による教養新書。地熱発電は地球の熱を利用するクリーンエネルギーであり、火山大国である日本は世界3位の発電容量を持つが、これまでほとんど開発されてこなかった。だが、3.11の原発事故を経て起こったエネルギー問題で注目されるようになり、開発への規制も大幅に緩和されている。本書は、地熱発電の大きな可能性、開発を阻む問題点、など真山氏ならではの視点で多角的に言及する。
日本地球惑星科学連合ニュースレター Vol.9,No.3(2013年2月1日発行) のBOOK REVIEW に「地熱エネルギー:地球からの贈りもの」(江原幸雄著、オーム社)の書評が掲載された(評者 京都大学大学院理学研究科 鍵山恒臣教授)。
 IGA NEWS Quaternary No.90,Oct.-Dec.2012(国際地熱協会ニュース 季刊 90号)

 

IGAの活動

会長からのメッセージ

Roland N. Horne

ケニアのナイロビで2012112123日日IGA55回理事会開催。開催国ケニアでは活発な地熱開発が計画されており、2016年までに560MW2050年までに5000MWが計画されている。アフリカ地溝帯地熱会議(African Rift Geothermal Conference ARGeo-C4)も同時に行われたが500人以上が参加、大部分はアフリカ地溝帯の諸国からであった。アフリカ地溝帯での地熱開発は現在世界の地熱開発の1つの大きな中心となっており、アフリカ諸国民の電力アクセスに大きく貢献すると考えられる(推定資源量は全地域で1500020000MW)。

 

なお、201211月現在の世界の地熱発電設備量のベストテンは以下のようである。

1.アメリカ      3151.5MW

2.フィリッピン        1904

3.インドネシア        1307.3

4.メキシコ             958

5.イタリア             880

6.アイスランド         663.7

7.ニュージーランド     628

8.日本                 536

9.ケニア               216.5

10.コスタリカ           207.1

世界全体(24か国)   11130.6

 

再生可能エネルギー100%に向けて と題する、国連気候変動会議COP18/CMP8におけるRen Alliance共催イベントが、カタールのドーハで開催されIGAも参加した。

Zhonge Pang IGA特別研究委員会委員長)

 参加者から地熱発電におけるコスト問題に対する質問があり、地熱発電のコストは地点により異なること、最も大きな問題は掘削費(6070%に達する場合もある)であり、地球科学的進歩の必要性を述べる一方、地熱発電の長所は、低い運転コストと高い設備利用率(95%にも達する)にあることを述べた。また、産油国であっても、カタールは太陽光をはじめとする再生可能エネルギーを伸ばす努力していることを認識した。

 

REN Alliance について

IGAを含み、現在5つの団体から構成されている(the International Hydropower Association(IHA),the International Solar Energy Society(ISES),the World Bioenergy Association(WBA),the World Wind Energy Association(WWEA) )。REN Alliance IRENAInternational Renewable Energy Agency にもっとアプローチすること(MOUの締結)が合意された。また、再生可能エネルギーは長期的には化石燃料に置き換わることが可能であり、気候変動問題においてはより魅力的な解決策であることも合意された。

 

アメリカからのニュース

メキシコ地熱協会(Mexican Geothermal Association)の20周年記念年会が2012926日~28日、メキシコのモレリアで開催された。

 

アメリカ地熱資源協議会(Geothermal Resources Council)2012年年会が、2012930日から103日、ネバダ州リノで開催された。

 

アジアからのニュース

中国 第39回国際水文地質学者協会(International Association of Hydrogeologists)が2012921日カナダで開催され、その中で地熱に関する多くの項目も発表された(中国地質大学 Han Zhaisheng

 

日本

延性領域におけるEGS貯留層からの発電のための日本超脆性領域計画(The Japan Beyond-Brittle Project(JBBP) for power generation from EGS reservoirs in ductile zones)が始まった。これに関連して、2013312日~16日、仙台市で国際ワークショップが開催される。(東北大学 浅沼 宏)

 

フィリッピン

最近の地熱開発状況(Eugene G. Sunio, NGAP

 

オセアニアから

ハバネロ4号井における第1次および第2次流通試験(Graeme Beardsmore, Hot Dry Rocks Pty Ltd)。この井戸の温度は坑底(4204m)で241℃。流通試験で82分間、35kg/sの蒸気(191℃)が生産された。第2次目の試験では38kg/sの蒸気(圧力4200psi)が104分間生産された。この試験後、坑井刺激が行われ、24000回の地震が観測され、今後さらに3回目の流通試験が計画されている。

日本エネルギー学会誌 第92巻第1号(164-173) 
  稗貫峻一・本藤祐樹「拡張産業連関モデルを用いた地熱発電のライフサイクル雇用分析」 短評 本論文は社会経済的な影響として雇用創出に着目して、地熱発電の導入がもたらす雇用効果を的確に分析することを目的としている。本論文では、事業者へのヒアリング、電力会社の財務諸表等に基づいて、拡張産業連関表を新たに作成して、分析したものである。それによると、地熱発電は、運用に伴うサービス部門での誘発雇用量が多く、地域の雇用に資する可能性が指摘されるとともに、製造・建設段階での一時的な雇用効果が大きい風力、太陽光発電と異なり、地熱発電は継続的な雇用効果が大きいことも明らかにされている。今後、地域振興策としての地熱発電の重要性が注目されていくと思われる中、このような経済的分析はそのための重要な基盤を与えると考えられる。今後のさらなる研究の進展を大いに期待したい。
 温泉科学 第62巻 第3号 日本温泉科学会第65回大会号
                  平成2412月発行                             日本温泉科学会発行

 

巻頭言

 温泉科学の発展への期待と呟き             大山正雄

 

日本温泉科学会第65回大会概要              大塚吉則

 

特別講演

  北海道の植物エネルギー~気・食・薬~        堀田 清

  アイヌ民族と温泉                      本田優子

 

原  著

 日本の地下水・温泉水の原位置における支配的な酸化還元反応の推定                          穂刈利之

  皮膚のヌルヌル感に及ぼす温泉水の特性 

     大河内正一、古川 豪、栗田繕彰、タナツクソン パリア、池田茂男、漆畑 修、甘露寺泰雄

 

解  説

  大陸縫合帯(Suture Zone)の温泉(2)―イランの温泉― 

                  西村 進、髙松信樹、川崎義巳

 

会  告

  2013(平成25)年度日本温泉科学会第66回大会案内

 

お知らせ

  「温泉事業者と地熱事業者の意見交換会」 が月1回の割合ですでに5回開催され、忌憚のない意見交換が行われていることが報告されている。

 Geothermal Resources Council Bulletin Vo.41, No.6 November/December 2012

 

Communication from the GRC

   GRC Annual Meeting

    4日間開催。登録参加者 1087名。学生140名。180件発表(60時間以上)。75件以上のポスター発表。100人以上が会議前のワークショップに参加(掘削および貯留層の刺激)。141名の地熱開発現場へのフィールドトリップ参加。熱供給のフィールドトリップへ150名参加。80名以上の学生と企業リーダーとが雇用に関する昼食会に参加。166件の展示ブース。次回は、2013929日~102日、ネバダ州ラスベガスで開催の予定。論文募集(ドラフト締切201353日)。地熱図書収録の充実(WWW.geothermal-library org)。

Inside geothermal:

  North America,

*GTP Peer Review Excellence Award to Jim Faulds of the Nevada Bureau of Mines and Geology: The name of the project is  ”Characterizing Structural Conrols of EGS and Conventional Geothermal Reservoirs”

*Neal Hot Springs Archives Commercial Operation (Oregon). Currently 16 to 18 Net MW..

    *Wild Rose Geothermal Project (Nevada). 15 to 35 MW net (up to 40MW )

    *Chevrons Announces Re-Entry into USA Geothermal Market

    *Heat Pumps Get Boost in California

*California Lithium Extraction Bill Passes

*Hudson Ranch II Update Commercial Operation in 2015, 49MW

*Insurer Backs the Geothermal Industry

*Newberry EGS Update: started creating reservoir

*Utah Hotspot Discovered

*Puna Geothermal Ventures to Produce Hydrogen Fuel

 

Central & South America

 

Australasia

    *Geodynamics loses JV funding

    *Geodynamics Habanero 4 Reaches a Milestone: Habanero 4 will be paired with Habanero 1(injection well) in a closed loop system, which will power 1 MWe Habanero Pilot Plant in about April 2013.

    *Geodynamics Gains JV Partner to investigate a direct-heat geothermal project in Northern Australia

    *Australian Geothermal Energy Conference in Sydney: well down from previous years.  About 70 presentations.

.

    *Geothermal Helps New Zealand Survive a Drought

 

Asia

*More Backing of Geothermal in Japan

経済産業省は地熱発電に関する技術開発や研究を行う企業や大学へ資金援助を行うことで、地熱産業に対して援助しつつある。1010日号の電気新聞は、経済産業省は、新しい地熱発電開発を目指す研究、掘削コストの削減、高性能蒸気タービンの開発等広範囲にわたるテーマの研究開発を推進すると報じている。

    *Philippines Update

    *Indonesia Update

    *Geothermal Power in India: A 3-5 MW pilot power plant could be completed by 2013-2014.

   *Geothermal in Vietnam: 18.7MW by December 2014 and Ta Huong, Deputy Chairman of the Vietnam Thermal Association, said Vietnam has the potential for developing geothermal power in almost all provinces and cities nationwide.

Africa

    *Olkaria III Update: up to 84MW, further extension up to 16 MW

 

Europe

    *Government Help for U.K. EGS

    *Swiss Consider Geothermal

    *Expansion Planned for Reykjanes Geothermal Power Plant:

    *Iceland to Help East African Geothermal

 

Technology

    *Salton Sea Volcanoes Still a Threat

    *H2S Eating Bacteria

 

Education

    *Winner of National Geothermal Student Competition Announced: 1st Place=Idaho State University “Development of an Integrated, Testable Conceptual Model of Blind Geothermal Resources in the Eastern Snake River Plain as it Applies to the Newdale Geothermal Project.

    *Learn About Geothermal Through a Video Games

 

Climate Change

    *Carbon Emissions from U.S. Energy Production Lowest for a Decade

 

36th GRC Annual Meeting, Part One

  Opening Session

 

  GRC Annual Charity Golf Tournament

 

  International Luncheon

 

Student Leadership Luncheon

 

Six Field Trips

 

Exhibiting Heat: Geothermal Museums on Three Continents

 

Publications & Websites

    *Geothermal Handbook: Planning and Financing Power Generation is a comprehensive guide to planning and financing geothermal projects. The 164-page report can be downloaded from the World Bank Energy Sector Management Assistance program website at www.esmap.org/Geothermal_Handbook.

  

Calendar of Events

JOGMEC NEWS Vo.31, 2012年12月号 今こそ考えたい石炭と地熱発電の現在そして未来  独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)
 
    今、なぜ石炭が重要視されているのか? 2.
 
    今、なぜ地熱発電が重要視されているのか? 3.
 
  石炭はこんなにたくさん使われている! 世界のエネルギーの3割は石炭から生まれる 4-7.
 
  日本は世界第3位の地熱資源大国 次代のベースロード電源として高まる期待 8-11.
       ・安定した出力、低い環境負荷と優れた性能
    ・地熱貯留層と金属鉱床
    ・地熱資源を有効活用するために
    ・世界の地熱発電所の多くは日本製
    ・日本の地熱発電は電源の優等生
    ・5年で2倍に伸びる地熱発電量
    ・初期調査から操業まで
    ・低温の熱水でも利用できるバイナリー発電
  
 
日本地熱学会誌第34巻第4             平成241025日発行 

 

巻頭言 

地熱開発への追い風の中で

松永 烈

 

ニュース

  産総研主催サイエンス・カフェおよびサイエンス・トークの報告(20121月および7月)

安川香澄

  日本地熱開発企業協議会(地開協)第9回技術交流会開催

大関仁志

    地熱開発の可能性と環境影響評価に関するシンポジウム、福岡で開催

常川耕治

    JICA、東アフリカ諸国向け地熱エネルギー開発研修のための6か国からの関係者来日

内山明紀・籾田 学

論  文

  垂直型地中熱交換井における地下水のクロスフローが熱交換量に及ぼす影響の評価

藤井 光・駒庭義人・井岡聖一郎・渡辺敦史・井上陽平

    地球温暖化対策効果から見た温暖地方における地中熱利用可能性

野本卓也・藤井 光・内田洋平・利部 慎・嶋田 純

 

特  集

  「海外技術報告」の掲載にあたり

安川香澄

 

総  説

  地熱エネルギーの将来について

ローランド N. ホーン

 

技術報告

  韓国における地熱エネルギーの現状と将来

リー テジョン(李 泰鐘)・ソン ユンホ(宋 允鎬)

 

学会記事

 

書  評

  「コラプティオ」(文藝春秋 真山 仁著)

安達正畝

 

 
地熱技術 Vol.37,Nos.3&4(Ser.No.81)                 平成241130日発行

 

巻頭言 

日本における地熱発電の最近の動き

芦田 譲

 

特別寄稿 

高温岩体研究の想い出(雄勝計画を中心として)

堀 義直

 

海外情報 

GRC2012大会に参加して

海江田秀志

 

国内情報

  新エネルギー等導入促進基礎調査(地熱開発導入基盤整備調査)菰ノ森地域の結果概要

番場光隆・小関武弘・田中啓二・兵頭 浩・遠藤 晋・松永絹子・松岡一英・谷下田雅之・野村佳範・和佐田博史

 

  新エネルギー等導入促進基礎調査(地熱開発導入基盤整備調査)木地山・下の岱地域の結果概要

岡部高志・佐藤龍也・木崎有康・大澤健二・小田中浩一・鎌田邦一 

 

トピックス

  地熱情報研究所の設立にあたって

江原幸雄

 

技術紹介

CO2流体及び高温流体採取と原位置での鉱物-水反応試験用地化学サンプラーの開発

杉山和稔・小澤晃子・上田 晃

 

現場紹介

  山葵沢地熱プロジェクトの現況について

中西繁隆

 
 「トコトンやさしい地熱発電の本」 書評

 

出版 日刊工業新聞社 2012125日発行、159ページ 著者 當舎利行・内田洋平

 

本書は、3.11後地熱エネルギーが注目される中、近年地熱開発が停滞してきたことにより地熱開発技術を継承していくことが困難になりつつある現状を憂い、特に若い人々を対象に、その解決に資することを目的として書かれたものである。多忙な研究および研究管理の中、短期間でまとめられたとお聞きし、著者の熱意と頑張りに敬意を表したい。

 

本書の構成は著者の説明によれば以下のようになっている。「第1章では地熱発電の歴史やメーカー、最初の発電所が生まれた経緯などについて紹介しています。第2章では地熱発電の源となる地球の熱構造や地熱地帯などについて解説しています。第3章ではさまざまな地熱発電の方法について、第4章では地熱発電所ができるまでの経緯について解説しています。地熱発電では、地熱地帯に適した発電方式を採用することや発電所の建設までに多くの時間がかかることがわかると思います。第5章では地熱発電建設や運用に必要なコストやコストに大きく関係する規制緩和について、第6章では地中熱について、また第7章では未来の技術や夢について書いています。第8章では、みなさんが疑問に思うような事柄について答えています。」

 

本書のタイトルに「トコトンやさしい」という冠がつけられているように、著者は執筆にいくつかの工夫をしている。その1つは、各章は数個から10数個の項目から構成されているが、項目ごとに、「説明1ページ・関連した図表1ページ」というセットで記述されており、コンパクトで理解しやすい構成となっている。このような構成は、読み続ける上で、一種のリズムを感じ、記述が活き活きと感じられる。このことは本書の理解に大いに貢献すると考えられる。

 

また、1つの特徴的なことは、原理・メカニズム等の説明が、通り一遍ではなく、一歩、深く立ち入っていることである。たとえば、温泉バイナリー発電の説明をしている、第15節 温泉を利用した発電 では以下のように説明されている。「・・・・。このシステムは、温泉として汲み上げられた熱水から気水分離して蒸気を作り出し、熱交換により低沸点媒体を気化させるシステムになっています。松之山温泉での実験のように気水分離器を通さずに直接熱水から低沸点媒体を気化させることも可能ですが、熱交換器内でスケールと呼ばれるニ酸化ケイ素(SiO2)や炭酸カルシウム(CaCO3)を主成分とする鉱物の沈殿により目詰まりが懸念される場合、このようなシステムをとる必要があります。」

 

上述のような説明は、必ずしも一般の方々には必要ないかも知れないが、若い世代、特にこれから地熱に取り組もうとする人たちにとって、通り一遍ではなく、考えることの必要性あるいは楽しさを感じてもらえ、さらに、深く考えることの動機になることが期待されるのではないかと思われた。

 

本書は、その内容の多くを占める地熱発電に関しては、著者の一人當舎利行氏によって書かれており、第6章地中熱に関しては、研究最前線にいる若手研究者である内田洋平氏によって書かれているが、地中熱に関して、特に基礎から丁寧に説明されており、基礎をきちんと理解してから応用に臨むことの必要性を改めて感じた。

 

また、著者(特に當舎氏)が国立研の研究者であることから、国による地熱技術開発の歴史の裏側も記されているが、このような内容は外からは中々分かりづらいこともあり、興味を感じた。

 

今年(2012年)は、5月に「地熱エネルギー―地球からの贈りもの―」(江原幸雄著、オーム社)、7月に、「東京で地熱発電」(清水政彦著、並木書房)、そして12月に本書と、地熱に関する3冊の書籍が刊行された。地熱に対する世の中の期待、あるいはこれまでの認知度からすると、今後もまだまだ地熱に関する本の出版を期待したい。地熱に関する研究者・技術者だけでなく、経済的、政治的、あるいは社会的な面から地熱に取り組んでおられる方も少なくない。地熱に関する書籍の発行に多くの方に取り組んでいただきたいと思っている。

 

大きな書店に行くと、再生可能エネルギーの分野に、太陽光、風力等の個別のコーナーは見られるが、残念ながら地熱コーナーは見出せない。関係者がそれぞれの立場から、地熱に関する著書を世に問い、書店のコーナーの一角を占めるようになれば、地熱エネルギーの認知度も大きく改善されるのではないか。本書の上梓を喜びつつ、関係者の活躍にさらに期待したい。

ニュージーランド研究 第19巻 2012年12月発行
  
  特別寄稿 ニュージーランドの再生可能エネルギー部門および、日本-ニュージーランド地熱利用促進協力の可能性 ステファン・コーベット、48-62.
  速報 ニュージーランド学会創立20周年記念シンポジウム:ニュージーランドの地熱発電とクリーンエネルギー政策、74-77.
地熱発電の本 當舎利行・内田洋平著 157ページ  日刊工業新聞社
 第1章 地熱発電ってどんなもの
 第2章 地球からの熱エネルギーの利用
 第3章 地熱発電のメカニズム
 第4章 地熱発電所ができるまで
 第5章 地熱発電の経済性
 第6章 地中熱の利用
 第7章 地熱エネルギーのこれから
 第8章 地熱発電Q&A
JGL(Japan Geoscience Letters) Vol.8,No.4、 2012年11月1日発行
  TOPICS  地熱開発の動向と高温岩体システム 柳澤教雄、
電氣評論 2012年12月号 特集 エネルギー政策をめぐる論点 連載講座 エネルギー資源の動向(第4回 地熱エネルギーの開発利用とその新たな展開) 江原幸雄、63-68.
Saai Isara インターネット&パソコン活用マガジン「サーイ・イサラ」 2012年12月号 18-21 デジタル最前線 突撃レポート 今月のテーマ ついにブーム到来!? 地熱発電 江原幸雄(漫画による紹介 漫画:なとみみわ 編集:ムラカミ)
技術総合誌 OHM 2012年11月号 41-47.
  東日本大震災の記録~電力供給への影響と次世代電力システム構築に向けて~
「期待される再生可能エネルギーの研究開発(2)日本の次世代電力システムのあり方(総括)」 フリーライター斉藤勝司
火力原子力発電 火力原子力発電協会発行
 2012年10月号(No.673,Vo.63)
 特集 震災後の電力エネルギー技術の選択と展望
 5.再生可能エネルギーの導入
 5.4 小水力/地熱発電 大和昌一・小山 宏 69-74.
Linkage Vol.8  発行 平成24年10月
 マグマを電力に変える、日本の技術力 江原幸雄
 九州の地質特性を活かす「地熱発電技術」 佐藤和秋
 自然エネルギーが創る夢の暮らし、大分を起点に 阿部博光
温泉科学 第62巻第2号 平成24年9月発行
巻頭言 Health Resort Medicineの学際的研究の推進を  阿岸祐幸
 
原著 千葉県房総半島および茨城県南東部における非火山性温泉の水質および安定同位体比とその地質鉱物学的解釈 村松容一、濵井昴弥、山野 恭、千葉 仁、早稲田 周
加賀温泉地域の重力異常と地下構造(英文) 澤田明宏、別所宏美、平松良浩、河野芳輝、古本宗充
有馬温泉における泉源保護のためのモニタリング結果と温泉・鉱泉の特徴 益子 保、大塚晃弘、高橋孝行
三重県桑名市の長島地域における温泉付随ガス中4炭化水素系可燃性天然ガスの代替エネルギー化の検討 森 康則、村田 将、志村恭子、山口哲夫、野原精一、加治佐隆光、大沼章子
天然火山性水における導電性高分子ポリピロールの電界合成とエレクトロクロミズム(英文) 印南 雄、後藤博正
 
解説
大陸縫合帯(Suture Zone)の温泉(1)-アルジェリアのアトラス山脈の温泉- 西村 進
報告書 ニュージーランドにおける地熱発電-日本への教訓-(71ページ)
著者 自然エネルギー財団 上級研究員 水野瑛美
発行 2012年9月
内容
  序論
  ニュージーランドの地熱資源と地熱発電技術
  ニュージーランドにおける地熱開発の政策・制度のフレームワーク
  環境問題と政策のアプローチ
  地元のマオリ族との協力関係の構築
  リードタイム削減努力
  ニュージーランドにおける地熱発電の市場競争力
  ニュージーランド地熱発電開発の教訓
 
短評 この報告書執筆の目的は、「近年地熱発電を増やしているニュージーランドが、どのように日本とよく似た障害を克服してきたかについて理解を深めること」にある。日本とニュージーランドは、経済的・社会的・技術的観点から似た状況にあり、また、地熱開発上、似たような問題を抱えている。このようなことから、ニュージーランドが近年進めてきた地熱発電開発の手法は、停滞してきたわが国の地熱開発を進めていく上でいくつもの重要な示唆を与えてくれると考えられる。
 
本報告書では、ニュージーランドにおける、1)地熱開発に係る制度や政策のフレームワーク、2)マオリ族の人々との協力関係の構築、3)政策や事業者のリードタイムの削減努力、4)地熱発電のコスト競争力について考察している。
 
個々の事柄については詳しい知識をお持ちの地熱専門家もおられると思うが、本報告書のように、ニュージーランドの地熱開発における諸課題を、特に、政治的、経済的、社会的観点から体系的に整理・分析したものはこれまでなく、ここに書かれていることはわが国の地熱開発を進めていく上で大きな教訓となると考えられる。できるだけ多くの地熱関係者に読まれることを期待したい。
Linkage(西日本高速道路エンジニアリング九州(株)の広報誌)Vol.8 平成24年10月発行 未来を創る技術の力
 
  マグマを電力に変える、日本の技術力、p.2~3
     地熱情報研究所代表 江原幸雄
  九州の地質特性を活かす「地熱発電技術」、p.4~5
     九州電力(株)八丁原発電所副所長 佐藤和秋
  自然エネルギーが創る夢の暮らし、大分を起点に、p.6~7
     別府大学国際経営学部国際経営学科准教授 阿部博光
日経エコロジー 2012年10月号
日経BP社 2012年9月8日発行
 
再生可能エネルギーの実力を占う p.60~63,
地熱発電 資源量は世界3位 13年の沈黙を破り開発再開(馬場未希)
 
短評 わが国の地熱資源の最近の開発状況、解決すべき課題(自然との共生あるいは地域との対話)について、インタビュー等に基づいてコンパクトに紹介。
1 |  2 Next >> 
Institute for Geothermal Information. All Rights Reserved.