IGAの活動
会長からのメッセージ
Roland N. Horne
ケニアのナイロビで2012年11月21~23日日IGA第55回理事会開催。開催国ケニアでは活発な地熱開発が計画されており、2016年までに560MW、2050年までに5000MWが計画されている。アフリカ地溝帯地熱会議(African Rift Geothermal Conference ARGeo-C4)も同時に行われたが500人以上が参加、大部分はアフリカ地溝帯の諸国からであった。アフリカ地溝帯での地熱開発は現在世界の地熱開発の1つの大きな中心となっており、アフリカ諸国民の電力アクセスに大きく貢献すると考えられる(推定資源量は全地域で15000~20000MW)。
なお、2012年11月現在の世界の地熱発電設備量のベストテンは以下のようである。
1.アメリカ 3151.5MW
2.フィリッピン 1904
3.インドネシア 1307.3
4.メキシコ 958
5.イタリア 880
6.アイスランド 663.7
7.ニュージーランド 628
8.日本 536
9.ケニア 216.5
10.コスタリカ 207.1
世界全体(24か国) 11130.6
再生可能エネルギー100%に向けて と題する、国連気候変動会議COP18/CMP8におけるRen Alliance共催イベントが、カタールのドーハで開催されIGAも参加した。
Zhonge Pang( IGA特別研究委員会委員長)
参加者から地熱発電におけるコスト問題に対する質問があり、地熱発電のコストは地点により異なること、最も大きな問題は掘削費(60~70%に達する場合もある)であり、地球科学的進歩の必要性を述べる一方、地熱発電の長所は、低い運転コストと高い設備利用率(95%にも達する)にあることを述べた。また、産油国であっても、カタールは太陽光をはじめとする再生可能エネルギーを伸ばす努力していることを認識した。
REN Alliance について
IGAを含み、現在5つの団体から構成されている(the International Hydropower Association(IHA),the International Solar Energy Society(ISES),the World Bioenergy Association(WBA),the World Wind Energy Association(WWEA) )。REN Alliance はIRENA(International Renewable Energy Agency) にもっとアプローチすること(MOUの締結)が合意された。また、再生可能エネルギーは長期的には化石燃料に置き換わることが可能であり、気候変動問題においてはより魅力的な解決策であることも合意された。
アメリカからのニュース
メキシコ地熱協会(Mexican Geothermal Association)の20周年記念年会が2012年9月26日~28日、メキシコのモレリアで開催された。
アメリカ地熱資源協議会(Geothermal Resources Council)の2012年年会が、2012年9月30日から10月3日、ネバダ州リノで開催された。
アジアからのニュース
中国 第39回国際水文地質学者協会(International Association of Hydrogeologists)が2012年9月21日カナダで開催され、その中で地熱に関する多くの項目も発表された(中国地質大学 Han Zhaisheng)
日本
延性領域におけるEGS貯留層からの発電のための日本超脆性領域計画(The Japan Beyond-Brittle Project(JBBP) for power generation from EGS reservoirs in ductile zones)が始まった。これに関連して、2013年3月12日~16日、仙台市で国際ワークショップが開催される。(東北大学 浅沼 宏)
フィリッピン
最近の地熱開発状況(Eugene G. Sunio, NGAP)
オセアニアから
ハバネロ4号井における第1次および第2次流通試験(Graeme Beardsmore, Hot Dry Rocks Pty Ltd)。この井戸の温度は坑底(4204m)で241℃。流通試験で82分間、35kg/sの蒸気(191℃)が生産された。第2次目の試験では38kg/sの蒸気(圧力4200psi)が104分間生産された。この試験後、坑井刺激が行われ、24000回の地震が観測され、今後さらに3回目の流通試験が計画されている。
巻頭言
温泉科学の発展への期待と呟き 大山正雄
日本温泉科学会第65回大会概要 大塚吉則
特別講演
北海道の植物エネルギー~気・食・薬~ 堀田 清
アイヌ民族と温泉 本田優子
原 著
日本の地下水・温泉水の原位置における支配的な酸化還元反応の推定 穂刈利之
皮膚のヌルヌル感に及ぼす温泉水の特性
大河内正一、古川 豪、栗田繕彰、タナツクソン パリア、池田茂男、漆畑 修、甘露寺泰雄
解 説
大陸縫合帯(Suture Zone)の温泉(2)―イランの温泉―
西村 進、髙松信樹、川崎義巳
会 告
2013(平成25)年度日本温泉科学会第66回大会案内
お知らせ
「温泉事業者と地熱事業者の意見交換会」 が月1回の割合ですでに5回開催され、忌憚のない意見交換が行われていることが報告されている。
Communication from the GRC
GRC Annual Meeting
4日間開催。登録参加者 1087名。学生140名。180件発表(60時間以上)。75件以上のポスター発表。100人以上が会議前のワークショップに参加(掘削および貯留層の刺激)。141名の地熱開発現場へのフィールドトリップ参加。熱供給のフィールドトリップへ150名参加。80名以上の学生と企業リーダーとが雇用に関する昼食会に参加。166件の展示ブース。次回は、2013年9月29日~10月2日、ネバダ州ラスベガスで開催の予定。論文募集(ドラフト締切2013年5月3日)。地熱図書収録の充実(WWW.geothermal-library org)。
Inside geothermal:
North America,
*GTP Peer Review Excellence Award to Jim Faulds of the Nevada Bureau of Mines and Geology: The name of the project is ”Characterizing Structural Conrols of EGS and Conventional Geothermal Reservoirs”
*Neal Hot Springs Archives Commercial Operation (Oregon). Currently 16 to 18 Net MW..
*Wild Rose Geothermal Project (Nevada). 15 to 35 MW net (up to 40MW )
*Chevrons Announces Re-Entry into USA Geothermal Market
*Heat Pumps Get Boost in California
*California Lithium Extraction Bill Passes
*Hudson Ranch II Update Commercial Operation in 2015, 49MW
*Insurer Backs the Geothermal Industry
*Newberry EGS Update: started creating reservoir
*Utah Hotspot Discovered
*Puna Geothermal Ventures to Produce Hydrogen Fuel
Central & South America
Australasia
*Geodynamics loses JV funding
*Geodynamics Habanero 4 Reaches a Milestone: Habanero 4 will be paired with Habanero 1(injection well) in a closed loop system, which will power 1 MWe Habanero Pilot Plant in about April 2013.
*Geodynamics Gains JV Partner to investigate a direct-heat geothermal project in Northern Australia
*Australian Geothermal Energy Conference in Sydney: well down from previous years. About 70 presentations.
.
*Geothermal Helps New Zealand Survive a Drought
Asia
*More Backing of Geothermal in Japan
経済産業省は地熱発電に関する技術開発や研究を行う企業や大学へ資金援助を行うことで、地熱産業に対して援助しつつある。10月10日号の電気新聞は、経済産業省は、新しい地熱発電開発を目指す研究、掘削コストの削減、高性能蒸気タービンの開発等広範囲にわたるテーマの研究開発を推進すると報じている。
*Philippines Update
*Indonesia Update
*Geothermal Power in India: A 3-5 MW pilot power plant could be completed by 2013-2014.
*Geothermal in Vietnam: 18.7MW by December 2014 and Ta Huong, Deputy Chairman of the Vietnam Thermal Association, said Vietnam has the potential for developing geothermal power in almost all provinces and cities nationwide.
Africa
*Olkaria III Update: up to 84MW, further extension up to 16 MW
Europe
*Government Help for U.K. EGS
*Swiss Consider Geothermal
*Expansion Planned for Reykjanes Geothermal Power Plant:
*Iceland to Help East African Geothermal
Technology
*Salton Sea Volcanoes Still a Threat
*H2S Eating Bacteria
Education
*Winner of National Geothermal Student Competition Announced: 1st Place=Idaho State University “Development of an Integrated, Testable Conceptual Model of Blind Geothermal Resources in the Eastern Snake River Plain as it Applies to the Newdale Geothermal Project.
*Learn About Geothermal Through a Video Games
Climate Change
*Carbon Emissions from U.S. Energy Production Lowest for a Decade
36th GRC Annual Meeting, Part One
Opening Session
GRC Annual Charity Golf Tournament
International Luncheon
Student Leadership Luncheon
Six Field Trips
Exhibiting Heat: Geothermal Museums on Three Continents
Publications & Websites
*Geothermal Handbook: Planning and Financing Power Generation is a comprehensive guide to planning and financing geothermal projects. The 164-page report can be downloaded from the World Bank Energy Sector Management Assistance program website at www.esmap.org/Geothermal_Handbook.
Calendar of Events
巻頭言
地熱開発への追い風の中で
松永 烈
ニュース
産総研主催サイエンス・カフェおよびサイエンス・トークの報告(2012年1月および7月)
安川香澄
日本地熱開発企業協議会(地開協)第9回技術交流会開催
大関仁志
地熱開発の可能性と環境影響評価に関するシンポジウム、福岡で開催
常川耕治
JICA、東アフリカ諸国向け地熱エネルギー開発研修のための6か国からの関係者来日
内山明紀・籾田 学
論 文
垂直型地中熱交換井における地下水のクロスフローが熱交換量に及ぼす影響の評価
藤井 光・駒庭義人・井岡聖一郎・渡辺敦史・井上陽平
地球温暖化対策効果から見た温暖地方における地中熱利用可能性
野本卓也・藤井 光・内田洋平・利部 慎・嶋田 純
特 集
「海外技術報告」の掲載にあたり
安川香澄
総 説
地熱エネルギーの将来について
ローランド N. ホーン
技術報告
韓国における地熱エネルギーの現状と将来
リー テジョン(李 泰鐘)・ソン ユンホ(宋 允鎬)
学会記事
書 評
「コラプティオ」(文藝春秋 真山 仁著)
安達正畝
巻頭言
日本における地熱発電の最近の動き
芦田 譲
特別寄稿
高温岩体研究の想い出(雄勝計画を中心として)
堀 義直
海外情報
GRC2012大会に参加して
海江田秀志
国内情報
新エネルギー等導入促進基礎調査(地熱開発導入基盤整備調査)菰ノ森地域の結果概要
番場光隆・小関武弘・田中啓二・兵頭 浩・遠藤 晋・松永絹子・松岡一英・谷下田雅之・野村佳範・和佐田博史
新エネルギー等導入促進基礎調査(地熱開発導入基盤整備調査)木地山・下の岱地域の結果概要
岡部高志・佐藤龍也・木崎有康・大澤健二・小田中浩一・鎌田邦一
トピックス
地熱情報研究所の設立にあたって
江原幸雄
技術紹介
高CO2流体及び高温流体採取と原位置での鉱物-水反応試験用地化学サンプラーの開発
杉山和稔・小澤晃子・上田 晃
現場紹介
山葵沢地熱プロジェクトの現況について
中西繁隆
出版 日刊工業新聞社 2012年12月5日発行、159ページ 著者 當舎利行・内田洋平
本書は、3.11後地熱エネルギーが注目される中、近年地熱開発が停滞してきたことにより地熱開発技術を継承していくことが困難になりつつある現状を憂い、特に若い人々を対象に、その解決に資することを目的として書かれたものである。多忙な研究および研究管理の中、短期間でまとめられたとお聞きし、著者の熱意と頑張りに敬意を表したい。
本書の構成は著者の説明によれば以下のようになっている。「第1章では地熱発電の歴史やメーカー、最初の発電所が生まれた経緯などについて紹介しています。第2章では地熱発電の源となる地球の熱構造や地熱地帯などについて解説しています。第3章ではさまざまな地熱発電の方法について、第4章では地熱発電所ができるまでの経緯について解説しています。地熱発電では、地熱地帯に適した発電方式を採用することや発電所の建設までに多くの時間がかかることがわかると思います。第5章では地熱発電建設や運用に必要なコストやコストに大きく関係する規制緩和について、第6章では地中熱について、また第7章では未来の技術や夢について書いています。第8章では、みなさんが疑問に思うような事柄について答えています。」
本書のタイトルに「トコトンやさしい」という冠がつけられているように、著者は執筆にいくつかの工夫をしている。その1つは、各章は数個から10数個の項目から構成されているが、項目ごとに、「説明1ページ・関連した図表1ページ」というセットで記述されており、コンパクトで理解しやすい構成となっている。このような構成は、読み続ける上で、一種のリズムを感じ、記述が活き活きと感じられる。このことは本書の理解に大いに貢献すると考えられる。
また、1つの特徴的なことは、原理・メカニズム等の説明が、通り一遍ではなく、一歩、深く立ち入っていることである。たとえば、温泉バイナリー発電の説明をしている、第1章5節 温泉を利用した発電 では以下のように説明されている。「・・・・。このシステムは、温泉として汲み上げられた熱水から気水分離して蒸気を作り出し、熱交換により低沸点媒体を気化させるシステムになっています。松之山温泉での実験のように気水分離器を通さずに直接熱水から低沸点媒体を気化させることも可能ですが、熱交換器内でスケールと呼ばれるニ酸化ケイ素(SiO2)や炭酸カルシウム(CaCO3)を主成分とする鉱物の沈殿により目詰まりが懸念される場合、このようなシステムをとる必要があります。」
上述のような説明は、必ずしも一般の方々には必要ないかも知れないが、若い世代、特にこれから地熱に取り組もうとする人たちにとって、通り一遍ではなく、考えることの必要性あるいは楽しさを感じてもらえ、さらに、深く考えることの動機になることが期待されるのではないかと思われた。
本書は、その内容の多くを占める地熱発電に関しては、著者の一人當舎利行氏によって書かれており、第6章地中熱に関しては、研究最前線にいる若手研究者である内田洋平氏によって書かれているが、地中熱に関して、特に基礎から丁寧に説明されており、基礎をきちんと理解してから応用に臨むことの必要性を改めて感じた。
また、著者(特に當舎氏)が国立研の研究者であることから、国による地熱技術開発の歴史の裏側も記されているが、このような内容は外からは中々分かりづらいこともあり、興味を感じた。
今年(2012年)は、5月に「地熱エネルギー―地球からの贈りもの―」(江原幸雄著、オーム社)、7月に、「東京で地熱発電」(清水政彦著、並木書房)、そして12月に本書と、地熱に関する3冊の書籍が刊行された。地熱に対する世の中の期待、あるいはこれまでの認知度からすると、今後もまだまだ地熱に関する本の出版を期待したい。地熱に関する研究者・技術者だけでなく、経済的、政治的、あるいは社会的な面から地熱に取り組んでおられる方も少なくない。地熱に関する書籍の発行に多くの方に取り組んでいただきたいと思っている。
大きな書店に行くと、再生可能エネルギーの分野に、太陽光、風力等の個別のコーナーは見られるが、残念ながら地熱コーナーは見出せない。関係者がそれぞれの立場から、地熱に関する著書を世に問い、書店のコーナーの一角を占めるようになれば、地熱エネルギーの認知度も大きく改善されるのではないか。本書の上梓を喜びつつ、関係者の活躍にさらに期待したい。