『福井大教授 論文不正か 査読に自ら関与 千葉大教授と協力』 毎日新聞6月10日付朝刊はこう報じている。 福井大の60代の女性教授らが国際学術誌に投稿した学術論文で、この教授が、論文の審査(査読)を担う千葉大の60代の男性教授と協力し、自ら査読に関与した疑いのあることが関係者の話で分かったという。学術誌の出版社が研究不正と認定し、福井大教授側に論文の撤回を勧告したことも判明。福井大と千葉大はそれぞれ調査委員会を設置しているという。⇒今回の論文不正は、よく話題にされる、「データ捏造」によるものではなく、査読プロセスへの関与と判断されるかなり手の込んだもので悪質である。おそらく、福井大女性教授は圧倒的権力を持ち、千葉大教授にも、自らの研究室の研究者にも圧力をかけていたようだ。このうち一人でも不正に反対すれば問題は発生しなかったはずである(したがって、福井大・千葉大関係者全員に責任がある)が、女性教授の圧力が大きかったのだろう。福井大教授は、従来から論文を発表し、著書もあるようで、研究能力はあるようだが、今回は論文を早く公表する必要があったのではないか。これは本欄の筆者(当研究所代表江原幸雄)の想像だが,異動(別の大学等への転任など。研究者がより良い研究環境を目指すことは当然で妥当なことである)の話があり、先方から論文の追加を要求されたのかもしれない。しかし、今回の不正は、研究上許されるものではない。・・・研究倫理に詳しい京都薬科大の田中智之教授(薬理学)は「(この種の不正が)日本で発覚するのは初めて」と話しているという。関係者すべてにとって、問題が公表されたことは良かったのではないか。公表されなければ、関係者は今後十字架を背負いながら研究を続けることになる。当該大学の内部調査委員会の調査が妥当に行われ、広く公表されることが望まれる。